オレンジ色の奇跡

「1回だけ『兄ちゃんたち怖くねえの?』って聞いたことがあったんだよ。舞希は笑顔で『だって朔兄と晴兄は優しいもんっ!髪の毛の色が何色でも中身は変わらないでしょ?』だって……。さすがにびっくりしたね。しかも俺たちだけじゃなくて俺たちの仲間にも。誰に対してもそういう考えをもって接してたんだ」

 だからあのとき、俺にも怖くないって言ったのか。

 気を遣ってるだけだと思ってたけど、あれはあいつの本心だったとはな。

「そんな舞希を俺たちの所為でアメリカに移住させることになった。 それからだ。俺と晴樹や仲間が喧嘩を一切しなくなったのは。なるべく早く日本に戻らせてやりたい気持ちでいっぱいだった。 舞希も舞希であっちで護身術とか習ってたみたいだけどな。それでやっと5年ぶりに戻ってきた」

 だから、この兄妹は仲が良いのか。妹を守りたくて180度変わった兄たちと、兄たちと暮らしたくて自分を鍛えた妹。

 やっと日本で一緒に暮らすっていう同じ目標を達成できたっつーのに、また……つらい思いはさせたくねえな。

 俺だって、まあ、不良の端くれなんだし。お世話になった相川兄弟に少しばかりの恩返しでもするか。

 俺ができることは――

「学校までの送り迎え俺、やります」

 ――このくらいしかねえな

< 57 / 438 >

この作品をシェア

pagetop