オレンジ色の奇跡

 子どもみたいに騒ぐ二人を横目に時計を見ればすでに19時を回っている。……あれ? おかしい。

「朔兄! 晴兄は? 連絡ないけど、あった?」

 ぴたっと止まった朔兄は耳の裏に手をやった。

「……俺、晴樹とケンカしちゃってさ……。晴樹しばらく帰ってこないかも。そのうち連絡あると思うから」

 あ、うそだ。 朔兄と晴兄ケンカしてない。

 分かりやすいんだよね、朔兄は。うそつく時、絶対耳の裏掻くんだもん。バレバレ。

「分かった。ちゃんと教えてね?」

 朔兄と晴兄がケンカすることは珍しくない。あたしが帰国してから今日まで日は浅いけど、何度かケンカしてたし。けど、本当にケンカしてるなら、朔兄は晴兄からそのうち連絡があるなんて言わない。それに、理由だって教えてくれる。

 でも、今回は違う。

 絶対に喧嘩なんてしてない。 こんなの朔兄の態度を見て分かるもん。

 じゃあ何で? どうしてあたしに教えてくれないの? 隠さなきゃいけないようなこと?

 きっとあたしの性格を理解しての判断したんだろうけど、妹としては泣きたくなるんだよね。

 なんだか自分だけ、仲間外れにされたような。すごく寂しくて孤独感でいっぱいになる感じ。

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