オレンジ色の奇跡

「…………うーん」

 難しいことを考えるのを止めたあたしは棚を見上げて唸る。

 この棚の一番上にあるお皿を使いたい。けど、背伸びしたってジャンプしたって届かないんだよね。

 お兄ちゃん達は収納性を選んだみたいで、だいたいこの家の家具や棚は大きい。

「朔兄ぃー」

 と呼べば、

「おっ風呂だよ〜♪一緒に入――」

「るわけないでしょっ」

 まったく何考えてんの? 21歳の兄が、17歳の妹に言うことお?

 これほど、朔兄の年齢を疑いたくなる時はないんですけど。

「はあ……」

 どうしよー。あのお皿じゃなきゃダメなんだけどな。

「あっ!」

 椅子があるじゃんっ!

 ……うわ。この椅子不安定。 どう見ても……ま、いいか!すぐ取れば問題はないだろうし。

 あたしが片足を椅子に乗せたとき、

「おいっ!」

「ふぁいっ!?」

 後ろからいきなり声が聞こえたと思ったら岩佐先輩に腕を掴まれた。

「何してんの?」

 若干声が低い気がするのは気のせい……じゃないみたいです。

「え? いや、その、えーとっ……お皿を取ろうと思って」

「………」

 聞いておいて黙ります?

< 62 / 438 >

この作品をシェア

pagetop