オレンジ色の奇跡
お皿を取ってくれた岩佐先輩にお礼を言うと「ああ」とぶっきらぼうな返事が返ってきた。と思ったら、すっと踵を返し、ため息をつきながら頭をがしがしと掻き、再びソファーに座った。
……優しい、のかな?
え。でも、どうなんだろ。ソファーに座ってからずっとため息ついて――
「はぁ……」
――4回目
そんなにため息つかれたら気になるでしょ、普通。
「っな?!」
だから下から覗き込んだの。ま、飛び跳ねて驚かれたけど。
「やっぱり怒ってます?」
「は? なんで、俺が……」
「だって、さっきからため息ばっかりついてるんだもん……」
小さく呟いた言葉。岩佐先輩には聞こえないように落としたそれは、
「はあ……」
岩佐先輩のため息を誘ってしまった。
「……ほら、また」
「あ、悪いっ。別に、怒ってねえから」
ばっと顔を上げた岩佐先輩は一度合った視線を、ふっと反らしながら言った。
「そうですか? ……あ。ご飯出来ましたけど、お風呂が先が良いですか?」
「……いや、先に飯もらってもいいか?」
じゃあ、とあたしが先にお風呂に入ることと部屋にいる朔兄に一声かけてからリビングのドアを閉めた。