オレンジ色の奇跡

「何かあったんですか?」

「あー。それが……」

 気まずそうに岩佐先輩は朔兄に目をやった。

「あっ!!!!」

 目線の先には口が開いた缶ビールがすでに三つ、テーブルの上に転がっていて、朔兄の手には四本目が……空になったみたい。

 まだ、四つ。だけど、これから早い。酔い潰れるまで冷蔵庫でおとなしく冷えてる分だけじゃ足りない。

「あちゃー。 あ、朔兄、未和さんとケンカしたって言ってませんでしたか?」

「ん? 言ってたけど?」

「やっぱり。朔兄は未和さんとケンカしたらいつも酔い潰れるまでお酒飲むんです。いつもなら晴兄が付き合うけど……今日はいないから」

 晴兄がいない今日、一番危険なのは岩佐先輩か。

「朔真さんが酔い潰れる? そんなわけ……うそだろ? 酔ってるところすら見たことねえくらいザルじゃねえかよ」

「実際は朔兄より晴兄の方がお酒強いみたいです。朔兄が潰れるまで付き合ってるんで」

 いつもならぺらぺら話しだす朔兄も今日は何故かおとなしく黙ってお酒を飲んでいる。

「あ、岩佐先輩!とりあえずお風呂入ってください」

「え?」

「お風呂入ってすぐ寝るのが一番安全なんです!」

 岩佐先輩は朔兄に借りた着替えを持ち、お風呂場に向かった。

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