オレンジ色の奇跡

 空き缶をキッチンに運び、朔兄の様子を見ながら手際よく食器を洗う。

 その間にもう一本飲み終わったらしい朔兄はキッチンまで来て、棚を漁り、氷と焼酎を持ってさっき座っていたところに戻った。

「朔兄! あんまり飲んじゃダメだよ!」

 シカトを通す朔兄。 どうしよう。どうせケンカしてないんだし、晴兄に電話しちゃおうかな。

「ねえ、聞いてる?今日、岩佐先輩泊まるんだから、ね?」

 それでもシカトを貫く朔兄。

「朔兄聞いてるの?!」

 じっと。小さいころに見たことあるような、冷たい刺さる瞳。

 あたしはただ朔兄が心配だから言ってるのに。

「はあ……未和さんと何があったか知らないけ――」

「舞希には関係ないだろっ!!!!」

 身体が反射的にびくっとなったのが分かった。

 あーあ……怒らせちゃった。久しぶりだからかな? 今、すごく泣きそう。

「……ご、めん」

 小さく謝るあたしを朔兄は無視して、からんと澄んだ音を立てながら焼酎を飲む。

「……飲んでもいいけど、岩佐先輩には迷惑をかけないで……」

 朔兄の背中に呟いてから自分の部屋に向かった。

< 67 / 438 >

この作品をシェア

pagetop