オレンジ色の奇跡
空き缶をキッチンに運び、朔兄の様子を見ながら手際よく食器を洗う。
その間にもう一本飲み終わったらしい朔兄はキッチンまで来て、棚を漁り、氷と焼酎を持ってさっき座っていたところに戻った。
「朔兄! あんまり飲んじゃダメだよ!」
シカトを通す朔兄。 どうしよう。どうせケンカしてないんだし、晴兄に電話しちゃおうかな。
「ねえ、聞いてる?今日、岩佐先輩泊まるんだから、ね?」
それでもシカトを貫く朔兄。
「朔兄聞いてるの?!」
じっと。小さいころに見たことあるような、冷たい刺さる瞳。
あたしはただ朔兄が心配だから言ってるのに。
「はあ……未和さんと何があったか知らないけ――」
「舞希には関係ないだろっ!!!!」
身体が反射的にびくっとなったのが分かった。
あーあ……怒らせちゃった。久しぶりだからかな? 今、すごく泣きそう。
「……ご、めん」
小さく謝るあたしを朔兄は無視して、からんと澄んだ音を立てながら焼酎を飲む。
「……飲んでもいいけど、岩佐先輩には迷惑をかけないで……」
朔兄の背中に呟いてから自分の部屋に向かった。