オレンジ色の奇跡

 軽くドアをノック。が、応答なし。

 おい。まさかの無視かよ。中から何も音聞こえねえしなあ。とりあえずもう一回ノックして、と。

 二度目のノック。やっぱり応答なし。

「相川ー。……入るぞー」

 ドアノブを握ったまま、一応、声を掛ける。思った通りの無反応に、少し心配になりながらもガチャリとノブを回した。

 部屋の中は真っ暗。

 ドアを静かに閉めてから辺りを見回した。 だんだんと目が慣れてくると、部屋の真ん中辺りにちょこんと何かがいるのが分かる。

 気付かれないように近づいて、後ろから包むように抱きしめた。

 相川は震えていた肩が止まり、驚いたのか固まったまま動かなくなった、と思ったら。

「おおおおおおおおおっ!!!?」

 なんだよ。おばけって言いてえのかよ。

「俺おばけじゃねえんだけど?」

「…‥い、わさ…‥せ……ぱい?」

 振り返ろうとした相川の肩に顔を埋めた。

「ひゃっ!? なな何やってるんですか!」

「このまま……」

 まだ乾ききっていない髪の毛がひんやりとして、シャンプーの匂いと相川の匂いが俺の鼻をくすぐる。

「……せ……ぱい?」

 俺を頼ってほしい、甘えてほしい、離したくないと強く思うのは、確実に惚れてる証拠、だよな。

 後ろから抱きしめていた俺は、相川の正面に周り、向かい合った。

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