オレンジ色の奇跡
「あ。月、綺麗だな」
「本当だ。きれい……」
電気も点けず、カーテンも開けっ放しの部屋。
ちょうど良い具合に開けっ放しのカーテンから真ん丸い月が顔を覗かせている。
「……うさぎ」
うさぎっ?!
え?!今、岩佐先輩が呟いたよねっ?
「……ふふっ!」
我慢しきれず笑ったあたしを岩佐先輩は怪訝そうな顔で見た。
「似合わねぇとか思ってんじゃねえよ!月と言ったらうさぎの餅つきだろーがっ!」
「あははっ!! だって! うさぎって呟いたじゃないですかっ!なんかもう、ただ単純に可愛かったんですよ!」
「可愛いとか言われてもうれしくねえ!」
ああだこうだの言い合いは、ドーン!バターン!と何かが近くで倒れる音によってピタリと止んだ。
「……岩佐先輩?」
「……相川?」
あたしはいきおいよく立ち上がり、部屋のドアを押した、のに。
「……あれ?」
このドアって内側から押して開けるんだよね? なんで押しても引いても開かないわけ?!
「相川早く開けろっ!」
後ろで待っていた岩佐先輩に急かされるけで、ガチャガチャやっても開かない!
「……開かないっ」
「はぁ?!」
あたしの代わりに岩佐先輩が押したけどやっぱり開かない。