オレンジ色の奇跡

「………もしかして」

 そう呟いた岩佐先輩はしゃがんでドアに耳をあてた。

 すると、一瞬目を見開いた、と思ったらため息をついて、トントンとドアを軽く叩いた。

 同じことをしろってことかな?

「えっ……。 朔兄?」

 ドアに耳をつけて澄ましてみれば、すうすうと気持ちのよさそうな――寝息?!

「……はあ」

 まじかよ、と脱力する岩佐先輩はくるりと回ってドアに背中をつけた。

 えっ?! さ、朔兄がなんであたしの部屋の前に……しかも、ドアが開かないってことは――

「人の部屋の前で酔いつぶれてるってこと?」

「……やられたー」

 ぐしゃぐしゃぐしゃーっと乾いたばかりの髪の毛を掻き回す岩佐先輩。

「やられたって?」

「えっ……いや、あー……」

「岩佐先輩?」

 なぜかあたふたする岩佐先輩は、同じように隣に腰を下ろしたあたしを見て、立ち上がった。

 岩佐先輩どうしちゃったんだろ。朔真さんなんで……ちくしょー。まじはめられた。俺にどうしろっつんだよ。ってぶつぶつ言ってるし。

 まあ、確かに部屋に閉じ込められちゃったのは思ってもみないことだったけど。

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