オレンジ色の奇跡
◇◇◇
心臓が止まるかと思った。
まさか、相川が抱きついてくるなんて、な。 様子がおかしいとは思ったけど……。
こいつ……少し息があがって、体温も高い。熱でもあるのか?
とりあえず俺は壁に寄り掛かりながら、相川を後ろから抱きしめられるように、胡坐をかいている自分の足に乗せた。
やべえ。心臓持たねえかも。
「変な夢でも見たのか?」
なるべく冷静を装い口を開けば相川は首を縦に振る。
「……時々見るんです。途中まではっきり覚えているのに……いつも同じところで起きて……」
「思い出そうとするな。今日……っていうか昨日は色々ありすぎた。落ち着くまでこうしててやるから」
階段から落ちたってやつか。きっと、記憶の中を行ったり来たりしてるんだろうな。
「ありがとうございます。なんか助けてもらってばっかですね」
「ああ、そうだな。助けてばっかだな」
「そういえば、どうして起きてたんですか?」
……あ? 寝れるわけねえだろっ! 好きな女が無防備で寝てる横で、寝れるわけがねえ! 今だって……ああ、もう!
「んー。なんとなく」
「そうですか」
会話はたいして続かなかった。 でも、それでもいいと思うほど、相川と過ごす時間は心地よかった。