オレンジ色の奇跡
「あっ!」
廊下を歩っていると梨海がいきなり足を止める。
「梨海ちゃん……?」
優衣が不思議そうに梨海の顔を覗けば梨海はニヤリとして、
「優衣!優衣!優衣!」
「な、何?」
あまりにも“優衣、優衣”と連呼するものだから梨海の視線の先をたどる。
すると梨海の視線の先には、少し遠いが、神崎先輩が先生と話しているのが見えた。
「優衣!ダーリンよっ!早く行ってきなさいっ!
ていうか、あっちも気付いたー!!」
「梨海ちゃんっ!」
手を振る神崎先輩に優衣は少し遠慮がちに手を振り返す。
それを見た梨海はキャァァァっと喚き、その反対に優衣は顔を紅く染めている。
ふと、神崎先輩の後ろを見ると岩佐先輩も一緒にいるのが分かった。
岩佐先輩は誰かと話している様子でまだこちらには気付いていない。
神崎先輩がこっちに向かって歩くのと同時に岩佐先輩と話している相手が見えた。
そこには、楽しそうに話す岩佐先輩と、明るめの茶色の髪をきれいにポニーテールで結わえている女子生徒の姿。
その女(ひと)は、誰もが羨むような美形で、出るところは出る、引っ込むところは引っ込むと抜群のスタイルの持ち主だ。
岩佐先輩との距離は、離れているため話している内容は聞こえないものの、微かにだが楽しげな笑い声が聞こえてくる。
岩佐先輩が、女の子と話しているのを初めて見た気がする…。
笑い声ならまだましだ。
笑っているのだ。
別に、笑っていることが悪いというわけではないが……。
なんだかその笑顔が親しみが込められているようで………。
あたしの胸がギュウっと締めつけられた。
岩佐先輩を見ていられなくて自分の足下を、上履きを睨み付ける。