オレンジ色の奇跡
確か、朔兄が21歳で晴兄が19歳だっけ?
この二人は、昔喧嘩が強くて有名で二人に敵うものがいないとまで噂された男たち……らしい。
あたしが中学に上がる前、お兄ちゃん達は売られた喧嘩はすべて買っていた、という話を聞いたことがあるんだけど。
聞いたことがあるだけで、お兄ちゃん達に聞いても、いつも笑ってごまかすばっかで詳しくは聞いたことないんだよね。
お兄ちゃん達がこの状況のままだと、あたしが中学に上がった時狙われて危ない、と理由で小学校卒業後、半ば強制的にアメリカに移住させられた。
それから、どうしても日本に帰ってきたくて、空手、柔道、合気道など色々習い自分の身は守れるようになった今――高校2年の秋。お父さんとお母さんから無理やり許しを得て、5年ぶりに日本に帰国した。
そう。今日、アメリカから無事に帰ってきた……わけだけど。
初日からあんなのに絡まれちゃったし。それに、金髪不良男も気になるなあ。明日、またあの公園に行ってみよ。お礼言わないと。
そう思って次の日、あらかた荷物の整理を終えてから、昨日の公園に行こうと玄関の扉に手を掛けた瞬間。
「舞希?どこ行くの?」
振り返れば、上半身裸でタオルを首に巻いた朔兄に話しかけられた。
「公園に行こうと思って」
「ダメだよ。昨日ハルから聞いた。昨日の今日なんだから、またそいつらに会うかもしれないし、また迷うかもしれない。 もう少し、慣れてからにしなさい」
少し離れたところにいた朔兄は、しゃべりながら、あたしの真ん前までやってきて、所謂お兄ちゃんらしいことを言ってあたしの頭を撫でる。
「しょうがないなあ」と肩を竦めたあたしは、諦めて自室に戻った。
……あ。そういえば、金髪不良男、どっかのブレザー着てたような……。あの制服ってどこの学校なんだろ。
っていうか、どうして助けてくれたのかな。 日本に帰ってきた今、最大の謎になりそう。