オレンジ色の奇跡


◆……

 玄関を出ると冷たい空気があたしの身体を包む。

 今日は、昨日と打って変わっていちだんと寒い。


「………まじさみぃんだけど」


 後ろから声がすると思い振り返ればそこには岩佐先輩の姿。


「……おぉ、相川。偶然だな。俺も今帰るとこ」


 『偶然だな』


 先輩は、毎回毎回同じ言葉を言う。

 それでも良いと思ってしまうあたしは、相当岩佐先輩が好きだなと自覚してしまうほど。

「“偶然”ですね」

 『偶然』でも少し期待してしまうあたしがいる。

「じゃあ、帰るか」

 先輩の一言であたしの頬は緩む。

「……はい」

 返事をして並んで歩く。

 先輩との距離が近づいたり離れたり……。

 ただ、それだけのことであたしの頬は紅く染まる。

 それを、隠すようにあたしはマフラーに顔を埋めた。


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