ヒトメボレ[完]
あわてて内ポケットから名刺を取り出し、自分の携帯番号とアドレスを裏に書きつける。

「よかったら、これ・・・」

彼女に向けて差し出したけど、受け取ってもらえるだろうか。

「もし、迷惑じゃなければ、連絡していただけませんか」

ダメもとで差し出した名刺だったけど、しばらくしたら震えている可愛らしい手で俺の名刺を受取ってくれた。

もうそれだけでうれしくて、顔がにやけてしまう。

「あ、あの」

震えている彼女の声から、緊張しているのが伝わってくる。

「はい」

俺も同じように緊張していると思うとなんだかおかしくて。

「私、も、いつもあなたがいるのでこの車両に乗っていたんです」

え?

なんだか予想外の言葉が彼女の口から飛び出してきて。
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