ヒトメボレ[完]
「だから、あの」

彼女の言葉の続きを聞く前に、思わず横にあった手を握ってしまった。

「・・・俺、やばい」

自分でも顔が赤くなっているのがわかる。

やばい、マジでやばい。

うれしくて、今ここが電車の中じゃなかったら叫んでいたかも。

「一目惚れだったんです、あなたのことが」

必死で気持ちを落ち着かせるように、できるだけ小さな声で呟くように彼女に伝える。

「こんな風に突然声をかけて気持ち悪いと思われたらどうしようって」

恥ずかしいけど、それ以上にうれしくて。

自分の気持ちをどうしても彼女に伝えたい。

「あの、この手をつないだままでも大丈夫ですか?」

勢いで握ってしまった手だったけど、徐々に不安になってきて思わず聞いてしまった。

聞くくらいならつながなければいいのに。これでもし断られたら立ち直れないかも。

「あ、あの、うれしい、です」


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