ヒトメボレ[完]
彼女の言葉に、心臓がどくん、と大きく揺れて。

「はは、あはは。俺今日仕事にならないかも」

ああ、今日はもうだめだ。仕事は後輩に任せようなんて社会人として全く駄目だ。

「私も、一目ぼれ、だったんです」

彼女が、きゅっとつながった手を握り返してくれて。

電車の中の、二人掛けの座席という、ちょっとした空間だけど。

すごく幸せで。

顔を見合せては二人でくすくす笑っていた。

駅に着いたからと降りる彼女。

名残惜しそうに別れた彼女は、俺が降りるひと駅前で降りて行って。

彼女と別れてから一緒に降りて一駅分くらい歩けばよかったなんて後悔した。

少ししたらポケットの中の携帯が震えて。

あわてて取り出すと、知らないアドレスからのメールで。

メールには彼女のアドレスと、電話番号が書かれていた。
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