ヒトメボレ[完]
彼は私が毎日同じ車両にいるって気が付いているんだろうか。

毎日同じ扉から乗り込んで、彼の座っている席の近くで立つようにしている。

本当は隣に座れたらどんなにいいだろう。

でも仕方無いよね。

私が乗り込む駅ではいつも座ることは難しい。

彼はいつも同じ席に座っているから、私よりも何駅か前から乗っているのは確か。

4駅前が始発の駅になるから、ひょっとしたら始発に近い駅なのかも?

「・・・到着!」

駅に着いて定期券を出し、改札を通る。

電車到着まであと15分。

急いで歩いてきたから、残暑厳しい10月の朝はまだまだ暑くて。

あわてて汗をぬぐい、化粧室でお化粧を直して気合いを入れなおす。
< 3 / 29 >

この作品をシェア

pagetop