ヒトメボレ[完]
伏せた視線からちらりと隣を見れば、何やら読書をしている彼の手元が視線に入ってきて、ますますどきどきしてしまった。

ああ、どうかこの心臓の音が聞こえていませんように!

隣に座れて舞い上がるほどうれしいのに、これじゃ近すぎて彼の方を見ることもできない!

うれしいけどなんだか複雑で、もう心臓がいつまで耐えられるのか不安!

かちこちに固まったまま座っていた私。

徐々に肩が凝ってきてしまって背中が痛くなってきた。

体制を整えようと、少し体を動かしたとき、隣の彼の肩とぶつかってしまった。

「ご、ごめんなさい」

「いえ、大丈夫ですよ。あの・・・」

謝った時ですら彼の顔を見ることができなかったのに、まさかの展開!

なんと彼が話しかけてきてくれた。

「いつも、同じ電車ですね」


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