Powdery Snow
そう叫んだ男は、またあたしに背を向けて歩きだす。
その背中を見つめながら首元に巻かれたマフラーをギュッと握りしめ、呟いた。
「何なのアイツ…」
よく分からない。
だけど正直、チョコを食べて“美味しい”って言ってくれた事は嬉しかった。
たとえ、嘘だとしても…
だけど見知らぬアイツに言われてもな。
それに、やっぱしムカツク。
ムカツクんだけど…
ムカツクんだけど…
あの整った顔だけには何故か文句を言えない。
それにわけの分からないまま巻かれたマフラーと、手に握っているミルクティーはあたしの身体を温めてくれた。
ムカつくんだけど、そんな些細な事が嬉しかった。