Powdery Snow

「ごめん。取りに行くね」 

「今日バイトあんの?」

「ないよ」


ってか、もう辞めるし。

振られたから?顔見たくないから?とかじゃなくて、卒業したら辞めようと思ってたし。


「バイトねぇんだったら、俺が取りに行くわ」


“だから鍵”

そう付け加えて話す淳に、目の前にいる絵梨佳は突然目を輝かせ口を開いた。


「あっ、じゃあ、あたしも行く」

「いいけど、俺今から行くよ?」

「いいよ。早く行こ」


そう言って絵梨佳は素早く机の上に出していたお菓子の箱と鏡と化粧ポーチを鞄の中に突っ込む。


淳を目の前にすると絵梨佳の行動が早くなる事に、あたしは笑える。


その姿を見ながら、あたしは鞄の中に入っている鍵を取り出し絵梨佳に渡す。

淳の後を追うようにして、あたしにヒラヒラ手を振る絵梨佳はまるで小犬だ。

そんな好きなら告れば?って思うけど、絵梨佳いわく“今の関係が好きなの”だってさ。


あたしとしては意味がわからない。



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