Powdery Snow
ちょっとドキッと高鳴った胸の鼓動すら自分でも分からない。
この男にドキッとするなんて…
呆然としているあたしの耳にガタンッと何かが落ちる音がした。
目線を下に下ろすと弘人が屈み込んで自販機の長細い穴に手を入れて何かを取り出した。
…ミルクティー。
って、えっ…
「ちょ、何勝手にボタン押してんの?」
「だって、お前全然押さねぇんだもん」
「今、悩んでたんだってば」
声を上げるあたしを見て弘人はうっすら笑いズボンのポケットに手を突っ込んだ。
スッと出された拳を突き出し「手」と言ってあたしを見る。
「早く早く」
急かすように言ってくる弘人を見て、あたしはセーターの袖の部分から半分しか出ていない手を前に出す。