Powdery Snow

「アイツは彼女じゃねぇよ。アイツとは何もねぇ。ただの幼なじみ。…ごめん、亜希に迷惑かけて。もぅ電話もしねぇよ」


“ただ、亜希と話したかっただけだし”

そう付け加えて弘人は何歩か歩きあたしの前で立ち止まった。

あたしの視界には弘人の足がみえる…

弘人はズボンから手を出し、そのまま身体を温めていたあたしの手を取り、その手の平にポンっと温かい物が置かれた。


…カイロ。


そして何も言わずにあたしの横を通り過ぎ、弘人は姿を消した。


〝もう電話もしねぇよ″

冷たい空間とともに胸が痛んだ…

それと同時に温かい何かが頬を伝って流れ落ちる。

なんで涙でてくんの?


弘人に渡されたカイロをギュッと握り締めてふと思った。


「あたし…アイツの事、好きなのかな…」





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