Powdery Snow

目の前にいる男を精一杯睨み付けると、また新しいチョコを口の中に入れていた。 


「やべっ、すげぇ旨いじゃん」 


そう言って食べる男の手に握られている箱を、あたしは素早く取り返し「美味しくなんかないよ…」と呟いて横にあるゴミ箱に投げ捨てた。


「おっ、おいっ」


男は声を上げた後、ゴミ箱の中を覗き「あーあ…」と声を洩らす。


「何よ?」

「勿体ねぇ…」


ジッとゴミ箱を覗き込む男の姿を見て、あたしも思わずチラッとゴミ箱の中に目を向ける。


あと何個かあるチョコはゴミくずと一緒に沈んでいた。 


「べっ、別に捨てるつもりだったからいいよ」

「やっぱ捨てるつもりだったんじゃん」


“すげぇ旨かったのに”


そう付け加えてゴミ箱の中を覗くこの男が本当にムカつく。 



< 7 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop