Powdery Snow
目の前にいる男を精一杯睨み付けると、また新しいチョコを口の中に入れていた。
「やべっ、すげぇ旨いじゃん」
そう言って食べる男の手に握られている箱を、あたしは素早く取り返し「美味しくなんかないよ…」と呟いて横にあるゴミ箱に投げ捨てた。
「おっ、おいっ」
男は声を上げた後、ゴミ箱の中を覗き「あーあ…」と声を洩らす。
「何よ?」
「勿体ねぇ…」
ジッとゴミ箱を覗き込む男の姿を見て、あたしも思わずチラッとゴミ箱の中に目を向ける。
あと何個かあるチョコはゴミくずと一緒に沈んでいた。
「べっ、別に捨てるつもりだったからいいよ」
「やっぱ捨てるつもりだったんじゃん」
“すげぇ旨かったのに”
そう付け加えてゴミ箱の中を覗くこの男が本当にムカつく。