あまりにも、遠い
 昔から、こういう押し売りに弱かった。
 ひどいときは頭の良くなるひもだと言われて、ゴムヒモを買わされそうになった。いつの時代なんだ。時代錯誤もいいところじゃないか。
 今回の救いはチェーン店だけあってケーキの値段が安かったことだろうか。とはいえ、ケーキをワンホールなんて一人で食えるはずもない。クリスマス当日、俺はきっとふわふわのケーキの前で頭を垂れているだろう。
 今から考えるだけで鬱になりそうだ。


 必要なものを買い揃え、俺はようやく帰路についた。袋を持つ手は辛いが、このよく知る帰り道には安心を覚える。
 鍵を開けて、部屋の中に入る。外よりもひんやりとした空気が、俺を出迎えてくれた。慌ててエアコンとこたつを付け、買ってきた食材を冷蔵庫にしまう。
 今日の夕飯は何にしようか。どっちにしろインスタント食品だ。迷う必要もなかったか。

 食事を終え、俺は寝た。
 暗闇に落ちる際にあいつの顔が一瞬だけちらついた。
 それを振り切って、虚無感に包まれながら俺は眠りにおちる。
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