御影の王
第一章、「名を聞かせてもらおうか」
ガタン、と。

教室の一番後ろの席に座る男と女が立ち上がった。

立ち上がったというよりは、腰を浮かせたというのが正解か。

その二人の表情はあまりにも驚きに満ち、頬に汗すら伝っていた。

「…四門、宮川、どうした?」

俺の隣。

このクラスの担任の教師が、二人の名を呼ぶ。

「あ…いえ…」

歯切れの悪い返事を返して、宮川と呼ばれた生徒が座る。

「……」

腑に落ちない、といった表情を俺に向け、四門と呼ばれた女も座った。

「あー、すまんな、自己紹介の途中で」

担任が俺に続きを促す。

…俺は黒板にチョークで大きく自分の名を書いた。






「紅勢十郎(くれないせいじゅうろう)だ。よろしく頼む」

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