御影の王
性別、背格好までは確認できない。

しかし姿が見えずともわかる。

アスファルトを貫くほどの強弓(つよゆみ)。

豪雨の如く矢を降り注がせる技量。

この弓兵は相当な手練だ…!

「さてと…どうする乙女?」

こんな状況だというのに、紅は槍を肩に担ぎ、呑気に相談でもするように私を見た。

「俺達が屋上に行くまでに奴は場所を移動し、またこちらの届かぬ位置からの攻撃を仕掛けてくるだろう。かといってこの位置からでは奴に俺達の攻撃は届かぬ」

そんな事を言っている間に、弓兵の第三波!

「くっ!」

返答などしている暇はない。

私は全速力で死の雨を回避する。

「俺の槍の投擲でならあそこまで届かぬ事もないが、直前の動作で投擲狙いなのはばれてしまう。読まれる攻撃では如何に威力があろうと意味は為すまい」

どういう神経だろう。

絶体絶命の状況下で息も切らさず矢を回避し、尚且つ舌が回る。

大した胆力と誉めるべきか。

< 54 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop