御影の王
驚いたのは弓兵の方だろう。

誰が三階建ての雑居ビルの屋上まで飛び上がってくると考えるだろう。

私の跳躍力と、紅の超人的な腕力。

二人が揃っていたからこそ可能だった作戦。

逆に言えば私と紅を同時に敵に回した事が、この弓兵の敗因となった。

弓で迎撃する事も忘れ、ただただ驚愕するばかりの弓兵に。

「ちぇえぇええいっ!」

私は刀を振り下ろす!

殺しはしない。

両断したのは弓兵の持つ得物…弓そのもの。

唯一の武器である弓は、弦が切れて最早使い物にならなくなる。

…争奪戦の掟として、送られてきた得物以外の武器は原則として使用禁止となっている。

ならば武器破壊こそは敗北の証。

「勝負ありだ」

私は刀の切っ先を、弓兵の喉元に突きつける。

「敗北を認めろ。さすれば命までは奪わない」

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