御影の王
まさか己の敵にこんな説教をする事になるとは思わなかった。

ましてやこいつは、俺よりも御影の王争奪戦に詳しいというのに。

「乙女、俺は先程お前を屋上に打ち上げた時に両腕を痛めている。つまり手負いなのだ」

「何?何故それを早く言わない!」

彼女は俺の手を引く。

「早く手当をせねばならぬな」

この女、どこまで本気でどこまで抜けているのか。

「違う!」

苛立ちながら手を振り払う。

「手負いなのだぞ?今なら俺をたやすく仕留められるとは思わぬか?」

それは、命のやり取りをする者にとっては当然の事。

相手の弱点を突き、弱者から淘汰されていくのは弱肉強食の世界では何らおかしい事ではない。

しかし。

「たわけ!」

それを乙女は激怒した。

「そのような卑怯は騎士道に反する!!」

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