魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
「ユリア、ああいうのは頂けないな。
やっぱり、セックスにはもっと情緒がないと」

と、それを見て冷静に批評している魔王様が一匹。

「無理矢理挿れるにしても、本人が懇願するように持ってくるところが醍醐味であって、ただ強引に突っ込むだけじゃ相手が女である意味がない。
勝手に人形にでもこんにゃくにでも突っ込んでればすむ話じゃないか。
本当、無粋だなぁ」

いやいやいや、もう結構ですよ、その話!

私は話を止めるために仕方なく、顔をあげてキョウを見る。

「あのね、キョウ」

「大丈夫♪ユリア、心配しないで。
同じ手錠とロープを使うにしても、俺はあんなに下手じゃない☆」

えっと、この状況で蕩けそうな笑みを浮かべて私を見つめるのは、その。
心底勘弁していただけません?

っていうか、手錠とロープは使わなくっていいんですけど?


折角のお楽しみを邪魔された挙句あざ笑われた二人のチンピラの顔が、一瞬のうちに青から赤へと見事に変わっていく。

「ねぇ、助けてあげて?」

私はそう頼まずにはいられない。

「嫌だ、俺の仕事じゃないし」

キョウはつまらなそうに言うと、空いているデスクに腰を下ろした。
長い脚をもてあまし気味に組むと、あっけにとられている二人の男に声を掛ける。

初めて逢ったとは思えないような、親しみすら覚える低い声で喋りかけた。

「続ければ?
あんまり楽しそうにも見えないけど。
どっちみち、そんなビデオ売れないんじゃない?俺なら買わないね」

その言葉で、綾香を撮っているビデオカメラがあることに、ようやく私は気がついた。
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