魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
とはいえ。

ずっとここに立っているわけにもいかない私は、恐る恐る板を進めた。

うわぁあああっ!

す、滑るっ。
滑るんですけどっ!!

しかも、言われたとおり真っ直ぐにキョウのほうを見ているから、身体がそっちに向かってしまう。

「ぶつかっていいよ、ハニー」

なんて言ってるけど、怪我するよね、怪我。

向こうはどうか知らないけど、とりあえず私は怪我をするに違いない。

そう直感した私は、直前でがぁっと転んで見せた。

ふかぁっと、パウダースノーが私を包み込んでくれるので思ったほどのダメージは無し。もう、それだけが救いって感じ。

頬にくっついた白い雪だけが、現実を突きつけるかのように冷たかった。

「抱きついてくれれば良かったのに」

にっこりと笑顔を浮かべて、キョウが私に手を差し出した。
グローブすらつけてないその手は、躊躇うことなく私を引っ張りあげる。

「あ、危ないに決まってるでしょっ」

「大丈夫だって。俺を信じて?」

信じた瞬間裏切りそうな色を宿した、黒い瞳がきらりと光る。

「ねぇ、ばっか見たいに早いんだけど大丈夫?」

私はとりあえず聞いてみる。
キョウは楽しそうにくすりと笑った。

「直滑降に降りてくるなんてスピード狂だと思ったけど、狙ってたわけじゃないんだね」

「あ、当たり前でしょ?
ここにおいでって、キョウが言うからっ」

そこまで喚いたとき、キョウは何も言わず軽々と、ボードをつけたままの私をお姫様抱っこで抱き上げて、すうと斜め右方向に滑った。

「きゃあっ」

空気を切り裂くような悲鳴に目をやると、私たちが居た当たりに、女性が一人転んでいた。

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