魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
この世で最高の愉しみに出会ってしまった人のように、散々笑い尽くしたジャックは目尻に溜まった涙を拭いながら私を見た。

「××さん、可哀想っ」

可哀想という言葉が不釣り合いな笑顔でジャックは呟き、それから表情を整えて息がかかるほど近くに顔を寄せる。

ドキン、と。
バスタオル一枚の私の心臓が、変な感じで高鳴るのを止めようもなかった。


「だけど、僕にとっては役得だねぇ」

と、ジャックはいたずらっ子の笑顔で言った。
さらりと、柔らかい金髪が揺れる。


直後。
私はジャックの腕の中に抱き寄せられた。

「ジャック?」

右肩に甘い、痛みとも言えないようなちくりとした感触。


吸血鬼に噛まれる感触は蚊に刺されるほどだよ、と教えてくれたのはジャックだったかしら。


確かにね。


でも、蚊に刺された後、肌か痒くなるように、彼に噛まれた後、私の心は痒みを感じていた。


ジャックは悪びれた風もなく、私の頬にキスをする。


「早く服着ないと、風邪引くし遅刻するよ」

柔らかい声が耳を擽る。


遅刻――


その言葉に弾かれた私は、とりあえず全て忘れて登校準備に没頭することにした。
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