魔王様！まさかアイツは吸血鬼？【恋人は魔王様‐X'mas　Ver.‐】
マンションに帰ると、ジャックはまるで猫に戻ったかのようにカーテンを開け放った寝室の、日当たりの良いベッドの上で眠っていた。

ブロンズヘアが、太陽光にすけて、まるで白くなったようにすら見える。
肌もまるで透き通っているかのようだ。

何もかもが薄いことに、心の奥が勝手にずきりと痛みだす。

とはいえ、ジャックの表情はあまりに幸せそうだったので、声は掛けないことにして、コーヒーをを作る。

約束通り、しばらくするとエイイチロウさんがやってきた。

何かが足りないと、私の心が騒いでいるのは分かっているけれど、それについて考察しても頭痛が起きるばかりなので、あえて気づかないふりで私は出来立てのコーヒーを二杯だけ入れた。

「いらっしゃい」

もう、自分が上手く笑えているかさえ自信がない。
だけど、問題を抱えているエイイチロウさんは瑣末なことは気にしていないようだった。

「綾香、どうだった？」

「なんていうか、人間って滑稽だよね」

自分だって人間のクセに、と言い返そうと想ったのだけれど、何故か言語化出来ない違和感が走って口を閉じた。

「自分が弱いから苦しいだけのに。
より弱いものを貶めて、助かった気になれるなんてどうかしてると思うんだけど」

「お見合いのこと？」

「そう。
だけど、あれは見合いって言う名の人身売買だよ」

おぞましい単語が、さらりとエイイチロウさんの口から出てきた。

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