魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
「それにしても、吸血鬼が来たり、悪魔がスキー場に紛れ込んでたり……。
なんだかとても物騒ですね」

「ああ、物騒だよ。
その原因の一端から、真顔でそんなことを言い出されてもどうしてあげればいいのかな?
アイツと別れる?」

原因の一端……
ってことは、キョウが魔界と人間界を行き来しすぎていて何かに歪みが生じたとでもいいたいのかしら。
私は知らず爪を噛んでいた。

「もしくは、転魔……?」

「ほぉ」

面白いものを見つけたかのように、神様が目を細めた。

「転魔なんて、ついにアイツが言い出したわけ?」

「まさか。
ジュノ……キョウの部下から聞いたんです。
二十歳までに転魔できるって」

「転魔に年齢制限なんてないよ。
ただ、魔界の存在を知って人間時間で5年以内に結論を出せっていう決まりはあるけどね。
ついに、千年の時を経て人間界の百合の花が、魔界の魔王の妃になるってわけ?
なんだか壮大なロマンスを聞いている気分だねぇ」

ちっともそんなこと思ってないくせに、芝居じみた口調で神様が感嘆の息を漏らす。
それから、悪戯を思いついた子供のようににやりと笑う。

「でも、そうするとあれだね。
早く本人と話し合ったほうがいいかもしれないよ?
君が言うところのキョウと、さ。
彼はああみえて、転人<テンジン>しようとしているのかもしれないだろう?」

……ま、まさか!
私の胸の中に、激しい稲妻でも駆け抜けていったような強い衝撃が走る。

「だってそんなことしたらキョウの寿命だって無くなっちゃうわ」

焦る私とは相対的に、神様は猫を思わせる伸びをした。

「そうだねぇ。
悪魔じゃさすがに輪廻転生の輪には入れてもらえないだろうし、ねぇ。
本当、非効率的だよね」
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