魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
35.クリスマスの甘い温言
ジュノも続けて姿を消した。
これを見届けるためだけに呼び寄せたのかしら?
キョウに視線を送るが、後姿なのでその表情は窺えない。
その向こうにジャックの姿があった。
見た感じは、さっきまでと変わってないみたいなんだけど……?
「キョウさんっ。その……」
ジャックが唇を開く。
が、それを最後まで聞かずに、キョウは僅かに肩を竦めて言葉を発する。
「礼ならもう聞き飽きた」
そうして、ジャックから視線を逸らすついでと言った風に振り向いた。
初めて逢ったあの日から寸分も変わらない美貌で私を見る。
「ユリア、おいで」
いつものように差し伸べられた手。
それは、いつも、何も考えずにパブロフの犬のように握れる手なのに。
今の私には触れてはいけない、遠い世界のものに見えた。
ステージ上のアーティストとか、テレビの中の俳優に近い。
目には見えているけれど、手は触れられない存在。
ぼうとしていると、キョウの唇が僅かに歪む。
「早くおいで。
俺が機嫌を損ねる前に。
それとも、俺が迎えに行こうか?」
艶のある低い声で、初めて逢ったあの日、頭の中に響いたのと同じ台詞を繰り返す。
……まるで、デジャブ。
これを見届けるためだけに呼び寄せたのかしら?
キョウに視線を送るが、後姿なのでその表情は窺えない。
その向こうにジャックの姿があった。
見た感じは、さっきまでと変わってないみたいなんだけど……?
「キョウさんっ。その……」
ジャックが唇を開く。
が、それを最後まで聞かずに、キョウは僅かに肩を竦めて言葉を発する。
「礼ならもう聞き飽きた」
そうして、ジャックから視線を逸らすついでと言った風に振り向いた。
初めて逢ったあの日から寸分も変わらない美貌で私を見る。
「ユリア、おいで」
いつものように差し伸べられた手。
それは、いつも、何も考えずにパブロフの犬のように握れる手なのに。
今の私には触れてはいけない、遠い世界のものに見えた。
ステージ上のアーティストとか、テレビの中の俳優に近い。
目には見えているけれど、手は触れられない存在。
ぼうとしていると、キョウの唇が僅かに歪む。
「早くおいで。
俺が機嫌を損ねる前に。
それとも、俺が迎えに行こうか?」
艶のある低い声で、初めて逢ったあの日、頭の中に響いたのと同じ台詞を繰り返す。
……まるで、デジャブ。