魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
「さぁね。だとしたら、今から願いを代える?」

キョウはふいと視線を逸らす。
そこに一瞬翳りが見えた。

今から願いを、代える?

キョウの言葉を反芻する。
もう一度、ジュノに初めて逢ったあの日に戻ったら、私は願いを代えるのかしら。

人間の恋人が欲しいって、言い直す?

考えるまでもなかった。
たとえ、人間の恋人が出来たって、ここまで好きになれるかどうか分からないじゃない。

ねぇ、キョウ?
だから、そんな顔、しないで?


まるで金縛りから解けたかのように足が自然と動き出す。

傍に寄れば、あれほど近づき難いと感じた彼はいつもどおりそのままで。
躊躇いもせずにその広い胸の中に私を抱き寄せてくれる。

「そんなの嫌」

「じゃああんまり俺に心配ばかりかけるのは止めてくれる?」

「かけたことなんてないじゃないっ」

顔をあげて唇を尖らせた。

「無自覚で俺をここまで振り回してるなら、余計にタチが悪い」

キョウは半ば呆れたように言うと、私の肩を抱いて教会から外に出た。

もう、随分と日が翳っていて気温も下がっている。
思わず身体を震わせる私の肩を抱くと、パチリとキョウが指を鳴らした。


さぁあと、教会の庭に魔界を思わせる風が吹き渡り、私はそれに浚われた。
キョウと一緒に。


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