魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
腹を立ててもいいはずだ。
かつて、<獣>と呼ばれたその人の方が。

なのに――

その人は、恨みを忘れ、ただ恩だけ。
恩だけを思って、ずっと。

マドンナ・リリーの生まれ変わりをひたすら愛し続けた。

もう、こんなに長い間。


まるで、これじゃ。
どっちが罰を受けているのか、分からないじゃない――。

滑稽なほど、酷い話だわ。

神様って、本当、罪作り。

だから、いいわよ。
神にも、悪魔にも破れない掟なら。

私が、あっさり破ってやろうじゃない。


突然。
キョウがその目に懐かしそうな色を浮かべ、そぉっと私の唇にキスをした。

「な、に――?」

「いけません」

唐突に、敬語になった。
その声すらも、キョウのものとは違うように思われた。

その言葉は、私に、ではなく。

遠い過去、マドンナ・リリーだった私に告げているもののように思われた。
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