雨の闖入者 The Best BondS-2
クローゼットを開け放つ。

ベッドの下の隙間を覗く。



「……」



誰も居ないことを確認し、エナは胸を撫で下ろした。


銃を持った手の角度を少し下げてゼルを見たジストは顔を顰める。


「……酷いな」

「誰が、こんな……」


荷物の中からガーゼと包帯を取り出しながら、エナが口の中で呻いた。


「ドアには鍵、窓に……も鍵……と。部屋に人の気配は無し。……密室殺人ってことになるのかなー? こゆ場合」


ジストが窓際に歩み寄り、鍵を指で叩いた。

そこは確かに内側から施錠されている。


「……バカなコトゆーなっ! とにかく手当てしないと!」

本当は、わかっていた。



紅の水晶を手に入れることが出来なかったから。

そして、事情を話してしまいたいと思ったことがバレたから。

あの、顔も知らない男が。

ゼルをこんな目にあわせたのだ。


そのことが何故か、ごく自然に理解出来た。

ベッドに駆け寄る。


「ゼル! しっかりして!! ゼル!!」


仰向けにさせて頬を何度か叩くが、まるで首が取れかけたぬいぐるみのように顔を揺らすだけだった。


反応らしい反応はおろか、生きていることさえ疑ってしまいそうな、力の抜けきった体。


生気のなくなった青白い肌が余計にエナの不安を煽る。


「……」


頬に手を当てて考え込むジストの横でエナは必死にゼルの手当てに当たった。



「ねえ、エナちゃん?」






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