雨の闖入者 The Best BondS-2

「何か言いたそうだな。結構なことだ。さあ、話せ」


感情の出やすい目を少々怨みながら、
エナは首を振ることでジストの手を振り払い、ゼルへと向き直る。


そして、彼の質問に対する答えを吐き捨てた。


「夜中。港と、湖の小屋で。男よ。ってか、何? そんな責めなくてもいいじゃん!」


「わからない奴だな」


突き放したような物言いにカチンとする。


いつもチャラチャラチャラチャラした物言いしかしないくせに、
時折真面目になったかと思えば人を喰ったような、見下した発言をする。


どっちにしても、最悪の男だ。


つい先程、ほだされかけた自らが馬鹿らしい。



「あんたみたいな奴に、わかってたまるかっ!」

「阿呆。お前がわかっていないという意味だ」


つい、手当てする手に力が篭る。


この時ゼルに意識が戻っていたなら口汚くエナを罵倒していたに違いない。


「言いたいことあるなら、ハッキリ言えっ! 人、見下して馬鹿にしてっ! 陰険なのよ! 言い方が!」


「言って、いいのか」


「だから、そうゆってるじゃん!」



いつでも余裕を失わない男はこの場においても、からかうようにわざと大きな溜め息をつく。


「言っておくが、お前がわけのわからんことばかり言うから悪い。何故お前を責めるか、だと? お前が一人で突っ走ることで、周りが心配するとは考えつかんのか」


「無事だったんだから、いいじゃん!」


言った傍から後悔した。

これではまるで子供の言い逃れだ。

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