雨の闖入者 The Best BondS-2


「後で聞かされて気を揉むだけの、こっちの立場も考えろというんだ。一人で行くなと言ったよな? 行くなと言ったんじゃない。一人で行くなと言ったんだ。何故、俺に言わない? その頭は飾りか?」


まったく、突いてくる箇所がうまい。


「……そんな意味だとは思ってなかったの!」


ただ単に行動を先読みされ、釘を刺されたとしか思っていなかった。


言えば付いてくるつもりだったなど、そこまで考えが及ぶものか。


非難がましい目で見るジストの視線がエナの居心地を悪くし、
結果、エナは言い訳じみた言葉を口にしてしまう。


「ってか、わかんないよ! そんなの! だいたい、あんたは日頃の行い、悪いんだから! たまに親身になられたってわかるわけないじゃん!」



言いたいことは言ってやったが、それでも罰の悪さは尾を引く。


心配させられるだけの哀しさはわかっているつもりだから。



「……ごめん」


結局は謝る。



ジストはラフを抱き上げ、立ち上がった。


先ほど、銃を向けられたことを覚えているのか、ラフは力一杯の抵抗を見せている。


「……まあいい。で? 此処に来てから夜中は一度も部屋を出てないはずのエナちゃんだけど、どうやって男と会えたって?」



「……――え?」




目の前の男は今一体何と言ったのだろう。



此処に来てから夜中は一度も部屋を出ていないと言ったか。



「ジストは寝てたから知らないだけで……」


「寝たのはエナちゃんが寝たのを確認してからだけど?」


「確認ってゆっても……」


どーやって?


と聞こうとしたが、ジストの悪戯っぽい目を見て、一つの結論へと辿りつく。


片目をぱちりとつむってみせたジストは誇らしげな声色で。


「ジストさんの特技はさっき見たでしょ??」


特技というのはアレだ。

驚異の素早さで鍵を開けたあのことだろう。



と、いうことはジストは乙女の部屋に侵入し、寝顔を拝んでいったということだろう。


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