雨の闖入者 The Best BondS-2
「どうして? 夢枕に立つ、とかよく言うじゃない。まあ、僕の場合はまたちょっと違うけど……」

「ちげーだろ、ロウの言い方じゃ、まるで誰かに仕組まれたみてーじゃねェか」


目の前に居るロウウェルが自分の作り出した幻想などではなく、真実ロウウェルの魂そのものだとしてもゼルは驚かない。

寧ろその再会を心から喜べる。

だがそれは両者の間にあるべきことで。

誰かの介入で可能になるようなことではないはずだ。


「だから、仕組まれたんだよ。その人ね、夢を操れるんだって。そしてね僕たちが本当に黄泉の住人になるまでは、誰かに強く思われている限り呼び出せるんだって」


現実のことを思い出せずに居るゼルはその言葉を正しく理解することが出来ない。

ロウウェルの言う言葉をまともに信じるなんてことも出来そうにない。


「僕に拒否権なんてなかったけど……ごめんね、こうなった以上、僕はゼル兄を殺すんだ。契約に縛られてるから、逆らえない」


ロウウェルは剣を構えていた両手の内の一つを空高く掲げた。

「それにね」


その手に光が集まる。

まるで、周囲に溢れる光を全て手のひらに吸収しているように。

否、事実その光に吸い寄せられるように周りの景色が歪みはじめる。

ゼルは右に左に体を捻り、信じられないといった顔で周りの景色がロウウェルの手のひらに収縮されていくのを見ていた。

美しかった景色はみるみるうちに姿を無くし、辺りは灰色の空間一色のみへとすり替えられた。

空間の果ても足元に地面があるのかさえわからない、灰色の世界。

そこに、ロウウェルの柔らかい声が響く。

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