雨の闖入者 The Best BondS-2
「……どーゆー意味?」
口の横をひくつかせて問い返す。
「いえいえ! 他意などございませんとも! ただ、皆がそう言っているという事実をお伝えしただけであり、私自身はこれっぽっちも思っておりませんから!」
「ふん、だとイイけどね」
エナは歩き出し、振り返る。
「今日中にカタつけてやるから、まあ見てなって」
ゼルがイェンを気に食わないと言っていた意味を深く噛み締めながらエナは言い放った。
「量りにかけた自分が許せないケド……ね」
イェンに聞こえないように小さく呟く。
量りにかけた末、自らの望みを優先してしまったことが許せなかった。
虎穴に入らずんば虎子を得ず、とはいうが、自身がしようとしている行為は、虎穴に入ると見せかけて、他の誰かを身代わりにしようとしているのと同じだ。
だが最低だと自分を罵ったところで、もう結論は出てしまった。
他の道は選べそうもない。
エナは自身の中に居座り続ける迷いを払うように、強く一歩を踏み出した。
「それでも、あたしはこの道を選ぶんだ」
言い聞かせるように口に乗せる。
さあ、旅立つ用意をしなければ。
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