雨の闖入者 The Best BondS-2
2.
静まりかえった巨大な屋敷の地下にある回廊に、変声期などまだ遥か彼方未来にある少年の悲鳴が木霊する。
回廊の最奥にある拷問部屋から其れは聞こえた。
その部屋には屋敷の主人と、買われてきた奴隷少年の姿があった。
黴臭い床に両手両足を縄で拘束され、全裸で転がされている少年の白い体を無数の蚯蚓(ミミズ)腫れが赤く染めている。
その顔には涙こそ浮かんでいないものの、汗や飛沫した自らの血でもってしても隠し切れない苦痛の表情。
鞭が撓(シナ)る。
高いのに鈍い音が部屋の空気を揺さぶり、同時に少年の絶叫が空間を劈(ツンザ)く。
「この……っ! 卑しいカスがぁっ!」
まるで女性を模した土偶のような体型をした男が、汗と油で顔をぎとぎとにしながら臭い息を撒き散らして鞭を振るう。
「ぅああぁぁっ!」
体はもはや自分の力では動けないというのに、それでも痛みに反応して体は仰け反る。
「買ってやって…! 奴隷にしては随分っ! 可愛がってやったのに!」
何度も何度も丸太のような腕が振り下ろされる。
全身が燃えるように熱い。
打たれた瞬間は鋭すぎる痛みのせいか冷たく感じ、そのすぐ後に灼熱の熱さが襲う。
「その恩を! 仇で返すとはなっ! み、見下げた根性っ! だなっ!」
冷たい床が気持ち良い。
朦朧とする意識の中で少年はそんなことを思った。
意識を手放してしまえればどんなに楽か。
だが、それすらも許されない酷い痛みに、気を失いかけては呼び戻される。