雨の闖入者 The Best BondS-2
(……まただ……)
薄暗い部屋で鈍く光る其れを見たとき、過去の記憶が刺激される。
また、刃物を向けられてしまった。
自分の人生への落胆と絶望。そして、怒り。
「私の妻を寝取った下賤の輩め……切り取ってくれるわ……!」
言っている意味はよくわからなかった。
寝取る、という単語も、切り取る、という言葉が示唆することも。
少年がその言葉の意味を理解したのはほんの数瞬の後。
男の目が、全裸である自分の股間を憎しみを込めて睨んでいたから。
「ひっ!」
喉が引き攣った。
拘束しておきながら、尚も動きを封じ込めんとするように覆いかぶさってくる巨漢の男。
本来、妻に向けられるはずの怒りまでもを全て少年一人に向けて。
それを罪とし、償い背負わせようとしている、身勝手で醜悪な男。
「簡単に楽にはさせてやらん……!」
ただでさえ重たいのに、押さえつけられた傷がじくじくと疼く。
まるで、その傷口から無数の虫か何かが溢れ出てきているかのように、疼き、脈打つ。
(なんで、僕がこんな目に……!)
理不尽な扱いを受けているんだ。
僕は何も悪くないんだ。
僕を捨てた親が悪いんだ。
あの化け物が悪いんだ。
この男が悪いんだ。
頭の中でぐるぐると外に出れないままの言葉が巡る。
こめかみのあたりが、血の気が引くように冷たくなる。否、熱くなったのか。
わからない。
何を責めればよいのか。
何を恨めばよいのか。
体の中に渦巻くこの感情が恐怖なのか、嫌悪なのか、憎悪なのか、もう少年自身にもわからなかった。
とにかく何かにぶつけたかった。
この感情を叩きつけたかった。
薄暗い部屋で鈍く光る其れを見たとき、過去の記憶が刺激される。
また、刃物を向けられてしまった。
自分の人生への落胆と絶望。そして、怒り。
「私の妻を寝取った下賤の輩め……切り取ってくれるわ……!」
言っている意味はよくわからなかった。
寝取る、という単語も、切り取る、という言葉が示唆することも。
少年がその言葉の意味を理解したのはほんの数瞬の後。
男の目が、全裸である自分の股間を憎しみを込めて睨んでいたから。
「ひっ!」
喉が引き攣った。
拘束しておきながら、尚も動きを封じ込めんとするように覆いかぶさってくる巨漢の男。
本来、妻に向けられるはずの怒りまでもを全て少年一人に向けて。
それを罪とし、償い背負わせようとしている、身勝手で醜悪な男。
「簡単に楽にはさせてやらん……!」
ただでさえ重たいのに、押さえつけられた傷がじくじくと疼く。
まるで、その傷口から無数の虫か何かが溢れ出てきているかのように、疼き、脈打つ。
(なんで、僕がこんな目に……!)
理不尽な扱いを受けているんだ。
僕は何も悪くないんだ。
僕を捨てた親が悪いんだ。
あの化け物が悪いんだ。
この男が悪いんだ。
頭の中でぐるぐると外に出れないままの言葉が巡る。
こめかみのあたりが、血の気が引くように冷たくなる。否、熱くなったのか。
わからない。
何を責めればよいのか。
何を恨めばよいのか。
体の中に渦巻くこの感情が恐怖なのか、嫌悪なのか、憎悪なのか、もう少年自身にもわからなかった。
とにかく何かにぶつけたかった。
この感情を叩きつけたかった。