雨の闖入者 The Best BondS-2
(神さま……! 神さまが居るなら……どうか!!)
この時ほど神の存在を信じたくなったことは無い。
祈りは天を突き抜けると信じたかった。
そして届くと信じたかった。
けれど、残酷な運命の女神はその願いを叶えてはくれなかった。
ナイフは無情にも鋭い一閃で振り下ろされ――!
「ぎぃああああああっっ!!!」
ぶちり、という音が耳に届こうかという時には既に自身の声に掻き消されていた。
生暖かい液体が下肢を濡らす。
焼き切れるような痛み。
否、それはもう痛みと形容出来るような代物ではなかった。
「あ゙あアぁっ!!!」
尚もぐりぐりとナイフをかき回す男の体の下で本能が身を捩じらせ、のたうちまわる。
理性など、其処には存在しなかった。
死の概念すらなく、ただ、その瞬間が――命が潰える瞬間が目の前にあった。
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