CornPotage【短編集】
鳴り響くケータイ。
あたしは電話に出ることも
ケータイの電源を切る事も出来なかった。
「ちょっと…どうにかしなさいよっ。うっとおしい。。。」
助手席に乗っている母親は苛立っていた。
演劇祭当日。
あたしは父親の車で新しい家へ向かっている。
あのまま、引っ越す事を言えずにお別れしちゃった。。。
ケータイの着信がまた鳴る。
やっぱり・・・電話に出たほうがいいっ。
あたしは思い切って電話に出た。
「もしもしっ…」
「レイナ、何やってんの!?演劇祭始まっちゃう!!」
美咲のパニックになっている声が聞こえる。
「美咲…ごめん。。。」
「謝るのはいいから、早く来て!!!」
「あたし…行けない…。」
「えっ…?なんでっ!!!!??」
あたしは意を決して美咲に言った。
「あたし…今日、遠くへ引っ越すことになったんだ。。。」
「えっ・・・・・・・・・・!?」
それから沈黙が続いた。
そして、ほんの小さい声で美咲が呟いた。
「信じられない。。。」
「ごめんっ。」
謝るしかない。
「ここまで練習してきたのがバカみたいじゃん…。」
「ごめんっ。」
すると奥から山本君の声が聞こえた。
「杉並?どうした?」