鳥籠

序章－必然

千羽鶴の証

8月25日、猛暑が続いた夏が嘘だったかのように、この日はとても涼しかった。

深緑の葉もそろそろ真紅に染まりそうだ。

「ねぇ今は何羽?」

医者や看護婦の足音しか聴こえない、物静かな病院で微かに少女の声が聞こえる。

「あたしはもう、100羽できたの」

声が聞こえた場所は5階の174号室。

そこには髪の長い少女が1人、ベットで色とりどりの色紙で鶴を折っている。

ベットのシーツには、何百羽の鶴が折られている。

何故だろうか彼女は、1人で誰かと話している様だった。

そんな彼女の病室で、カーテンが外の風のせいで静かに音をたてて揺れる。

その時、窓から入った太陽の日差しが、彼女の瞳へと映った。

「眩しい･･･」

彼女はベットから立ち上がり、窓とカーテンを閉める。

だが彼女はカーテンをもう1度開けて、空を見上げた。

空は雲一つない晴天で、澄んだ青色をしていた。

でも彼女は空をしばらく見つめていると、突然ノックの音が聞こえた。

その音に驚いて、彼女は窓から離れ、ベットへと急いで潜り込む。

「山上?俺だ、堤だ。入らせてもらう」

そう言ってドアを開けて病室へ入ってきたのは、長身で短い茶髪の勇ましい男だった。

男は大きな花束を抱えて、少女へと近づいてきた。

「見舞いに来た、もうすぐ大野や三井も来るぞ」

「そう」

素っ気ない態度の彼女に、男は呆れた表情を見せたが、近くにあった椅子をベットの近くへ持っていき、腰をかける。

「ところで山上、今日ここに何故俺が来たかは･･･わかるよな?」

男が問いかけてると、彼女は俯きながらも首を縦に振った。

「聞く気になってくれたんだな、ありがとう」

柔らかな表情で微笑み、彼女を見つめる。

さっきの勇ましく固い表情をは裏腹に、とても良い顔をしていた。

そして男は、椅子に腰を重くかけながら、口を開く。