彼女の事情

「…よしっ」

「…」



包帯で綺麗に巻かれた右手指のつけね。



「…奈緒」

「なに?」

「…なお」

「?」








ぽん☆
わしゃわしゃ



奈緒の手が頭を撫でる。



「泣きそうな顔しないでよ。」


「――っ」




奈緒の腰に手をやり引き寄せる。


奈緒の香り。
奈緒の体温。
奈緒の声。




全部独り占めして閉じ込めたい。


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