線香花火【短編】
傷口はまだ生々しくて、目をそらしたくなる。

「……」

純は言葉を失っていた。


そうだよね……

引くよね、こんな事する子。


だから嫌だったのに。

いくら幼なじみだからって……嫌になるよね。


「美弥、そいつは知ってるのか?美弥のこの姿を」

「知らないよ。言えない…重いから」

「別れろよ」

思わぬ純の言葉に、体中に緊張がはしる。

「えっ?」

「そんな奴とは別れろよ!」

「無理だよ~だって……好きだもん」

最後まで言いきれてるか分からなかった。
だって、純が泣いていたから。

男の人も泣くんだ……

そんな冷静な部分の自分は、彼も私の為に泣いてくれるのかな?って思っちゃった。

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