線香花火【短編】
私は彼を玄関まで見送る。
一段低い玄関に立った彼は、私と同じ目線になるんだ。
そんな状態が、結構好き。
「じゃあ、行くね」
私が悲しまない様に、行くねって言う彼。
彼の優しさがよけい辛い。
胸がキュッと掴まれる感じ。
こう言う時は彼の優しさが嬉しい反面、憎い。
私達はお別れのキスをする。
嬉しいはずのキスは、私にサヨナラを告げるものになってる。
「バイバイ」
私は、精一杯の笑顔で手を振った。
バタンとドアが閉まると、カツカツと廊下を歩く音が聞こえてる。