線香花火【短編】
街は、季節を先取りした洋服が飾られてる。
見てると全部欲しくなるよ。
ショーウィンドーに飾られてるワンピースを見ていた。
ふっと窓に見た事が有る顔が映る。
私は振り返った。
振り返らなければ良かった。
私は、とっさに柱の影に隠れた。
悪い事をしてるわけじゃないのに……
そこには元彼と奥さんだろう女性が、仲良さげに歩いていた。
彼は奥さんの体を時々心配しつつ、笑いながら歩いている。
まだ見ぬ子供の事を思って…楽しそうに歩いていた。
吐き気がする。
目の前が、ゆらゆらと揺れ始めた。
見なきゃ良かった。
分かってた。
もう仕方ないって諦めてた。
でも、そんな現場を笑って見れるほど、私の傷はまだ癒えてないんだよ。